ママは歯科衛生士

読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ママは歯科衛生士

ようこそ。あなたの知らない歯の世界へ

生田目さんのやさしさは、先生には永遠にわからない。

 

学校の先生って、不良がキライだ。

 

子どものころはなんとも感じなかったけど、その理由が、おとなになった今なら分かる気がする。

 

f:id:mama-eiseishi:20161027214919j:plain

 

生田目(なまため)さんは、いわゆる不良の女の子でした。

 

わたしが通っていた中学校は男女共学で、だからというわけではないですが、わりと和気あいあいとした、少なくとも校舎の窓ガラスが割れたまま授業を受けるみたいな荒れた雰囲気とはまったく無縁の学校でした。

 

そんな中で生田目さんはひとり髪を染め、スカートを膝上15センチぐらいまで短くして、ひとり不良でした。(となりの中学校には、同じような友だちがいるという噂でした。)

 

先生にもタメ口をきいて、先生も困った様子でしたが、でも強く注意したりすることもなかったように覚えています。きっとあまり関わりをもちたくないと思っていたのかもしれません。

 

わたしたち生徒も、そんな先生たちの様子にならうかのように自然に距離をとり、なるべく目を合わさないようにしながらも、遅刻したのに早退して、ひとり早々と校門を出て行く生田目さんの後ろ姿をじーっと見つめたりして、なんていうか、そういう魅力が生田目さんにはあったんだとおもいます。

 

f:id:mama-eiseishi:20161027222046j:plain

 

 ある日の放課後、何かの用で(何の用だったかは忘れてしまいました。)だれもいない教室にもどると、生田目さんと青木先生が話をしていました。

 

わたしの姿を見つけると青木先生はわたしを呼びつけて

「ナカタ、生物のテスト範囲わかるか? 生田目に教えたってくれるか」と言い残し、教室を出ていきました。

 

わたしは生田目さんの持っていた生物の教科書を開き、テスト範囲のページの最初と最後に丸をつけ、「こっからここまでやったと思う」と言いました。

 

「ん」と声を出して、生田目さんはパラパラと退屈そうにページをめくりました。

 そして「遺伝? 遺伝とか信じてないねん」と言って、生物の教科書をペラペラに薄くしたカバンに入れて帰っていきました。

 

f:id:mama-eiseishi:20161027225420j:plain

 

生田目さんはテスト期間中も学校に来たり来なかったりで、そのころには先生もクラスのみんなもそんな状態が自然になっていました。生物のテストの日も、来ていたのかいなかったのか、わたしもほとんど覚えていません。

 

ただ、わたしは遺伝の問題を解きながら、教科書に書いてあることを「信じてない」って、そういうふうに考えられる人の方がよっぽどすごいんじゃないかな、と思ったことを覚えています。

 

テストが終わっても、生田目さんは変わらず不良のままで、わたしもあの日以降、生田目さんと話すこともなく卒業式になりました。

 

f:id:mama-eiseishi:20161027230526j:plain

 

卒業式がおわって校門を出ようとしたとき、うしろから声をかけられました。

 

生田目さんでした。

 

髪は茶色くて、スカートも短いままの生田目さんです。

「生田目さんー」とわたしが言うと、生田目さんがいいました。

 

「昔、テスト範囲おしえてくれてありがとう。無事卒業やわぁ」

 

まだ数ヶ月前のことを「昔」とか言ってるのがおかしかったけど、卒業式でも、仰げば尊しでも、友だちの「ずっと友だちでいようなぁ」でも泣けなかったけど、なぜか生田目さんの言葉で涙が出そうになりました。

 

f:id:mama-eiseishi:20161027231955j:plain

 

きっと先生は、生田目さんみたいな不良のみずみずしすぎる感受性とか、うわべをつくろうカッコ悪さを嫌う潔癖性とか、そういうものを恐れていたんだと、今はなんとなくわかります。

 

でも、最後の卒業式でわたしにこんなふうに声をかけてくれた生田目さんのやさしさを、先生は永遠に理解することはないでしょう。

 

**************

 

なぜだかわかりませんが、急に肌寒くなった夜とかに、ふと生田目さんのことを思い出すことがあります。あの日からもうずいぶんと時がたった、いまでも。

 

スポンサーリンク

 

 

【あわせてどうぞ】

www.mama-eiseishi.com

www.mama-eiseishi.com