こんにちは。歯科衛生士のナカタ コマチです。
以前、以下の記事で「虫歯にならない方法」について説明しました。
そのなかで、虫歯にならないためには歯磨きの回数、やり方も大事ですがそれ以前に
「シュガーコントロールがもっとも大切だ」というお話をしました。
(シュガーコントロールとは、甘いものを食べないということではなく、甘いものを食べる頻度を減らすという考え方です。とても重要な考え方ですので、まだご覧になっていない方はぜひ参考にしてください。)
もう二度と虫歯になりたくない人へ。虫歯にならない方法 – ママは歯科衛生士
虫歯予防にはシュガーコントロール。
あれ? 虫歯予防には「歯磨き」じゃないの?
じゃあ、歯磨きってなんのためにやるんだろう??
こう思った方もいるかもしれません。
もちろん虫歯予防にも歯磨きはたいせつですが、それ以外に大事な目的があります。
そこで今回は歯磨きの目的、そしてその目的を実現するための正しい歯の磨き方について詳しくお話ししたいと思います。
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目次
歯みがきの目的は?
ズバリ、歯垢(プラーク)を落とすことです。
ではなぜプラークを落とさなくちゃいけないのでしょうか。
歯周病になって、歯が抜けてしまうからです。
ここでよく理解していただきたいのは、虫歯になったから歯が抜けるのではなく、歯周病になったから歯が抜けるということです。
虫歯と歯周病の違いを、すごーくかんたんにまとめてみますね。
【虫歯】
虫歯は、虫歯菌が出す「酸」によって歯が溶けてしまう病気です。
ですから一般的な虫歯というのは歯が「抜ける」ことには直結しないのです。
(もちろん痛みが出ているにも関わらず放置し、虫歯の進行が進みすぎると歯を抜かざるをえない状況にはなります。)
【歯周病】
それに対し歯周病は、原因となる菌が歯を支えている周辺組織に悪影響を与える病気です。
ですから、たとえその歯自体は健康で虫歯はなかったとしても、歯を支えている骨がダメになってしまうと、その歯はグラグラと揺れ、しまいには抜けてしまうことになるのです。
虫歯でも何でもない歯が、抜けてしまう。
これが歯周病の怖いところです。さらにこの歯周病、虫歯と違い痛みがありませんから自覚症状が出てきたときにはもうすでに症状が重くなってしまっていることがほとんどなのです。
そしてこの歯周病を引き起こす原因となるのが、歯垢(プラーク)なのです。
このプラークを落とすために歯磨きをする。これが歯磨きの目的です。
歯垢(プラーク)はどこについているの?
- 歯と歯の間
- 歯と歯ぐきの間
この2つ、と言いきってしまってもいいぐらいです。
ということは、歯を磨くときに意識しなければいけない場所もこの2つだということです。
みなさんは歯磨きをする際、なんとなく、惰性で歯の表面やかみ合わせの面ばかり磨いていませんか?
もちろん、歯の表面やかみ合わせの面を磨くことも大事です。
ですがそれだけでは歯磨きの本来の目的は達成できません。
歯磨きはプラークを落とすためにやる。
そしてそのプラークはおもに「歯と歯の間」「歯と歯ぐきの間」についている。
この大前提を理解していただいた上で、いよいよ歯磨きのやり方について説明させていいただきますね。
正しい歯磨きのやり方
おおきく5つのポイントにわけて説明させていただきます。
自分は今、どの歯を磨いているのかを意識する
ただ漫然と磨いていてはだめなんです。
よく、ボディビルダーの方が筋トレをする際にたいせつなポイントとして、鍛えたい筋肉を意識して(ときには語りかけながら笑)トレーニングする、なんて言っていますよね?
あれと同じ…ようなものです(たぶん!)
筋トレと同じかどうかは別としまして…
歯磨きにおいては、自分が今どの歯を磨いているのかを意識することがとても大切です。この意識が、このあとに説明する歯磨きのポイントの土台となります。
ペングリップで小刻みに歯ブラシを動かす
どの歯を磨いているのかを意識していれば、必然的に歯ブラシの動かし方は細かくなると思います。だいたい5ミリ〜10ミリぐらいの幅が適当だと言われています。
さらにこのとき、力を入れすぎないことが重要です。
どうしてもキレイに磨こうとするあまり、歯ブラシに力が入ってしまう方がとても多いです。(とくに、歯に対する意識が高い方に多いので注意が必要です。)
力が入りすぎてしまうと何がよくないのか。
- 歯ぐきを痛めてしまう
- 逆によく磨けない
のです。
ひとつめの「歯ぐきを痛めてしまう」のはなんとなくわかりますよね。
ふたつめの「逆によく磨けない」についてすこし補足すると、力を入れすぎると歯ブラシの毛先が開いてしまうんです。
毛先が開いた歯ブラシで歯を磨いてもプラークを満足に落とすことはできません。
この2つを避けるための方法として、ペングリップ(鉛筆持ち)で磨くことをすすめています。
5本の指で握りしめるようにして磨くとどうしても力が入りすぎてしまいますが、鉛筆持ちをすることで力の入れ過ぎを防ぎやすくなります。
歯に対し、歯ブラシの角度は90度
以前は「バス法」といって、歯に対して斜め45度で磨くのがよいとされていたのですが、
これだと歯ぐきを痛めたり退縮させてしまう危険が高いということで(歯ぐきの薄い女性はとくに)
今は「スクラビング法」といって歯に対し90度で歯ブラシを当てる磨き方が勧められています。
図にすると以下のような感じです。
ただ、絵を見ていただくと分かるとおり、歯の形は単純な真四角や長方形ではありません。
ですので、歯の根元の部分(歯ぐきに近い部分)を磨くときにはすこし歯ブラシを下から斜め上にあてるようにすると、よりきれいに磨けます。
これは最初にお話しした「自分が今どの歯を磨いているのかを意識する」にも通じるのですが、歯の形を(なんとなくでもいいので)イメージしながら歯を磨くことで、よりじょうずにプラークを落とすことができるんですよ。
歯磨き粉はつけすぎない
これは地味ですが、とても重要です。
お皿洗いの洗剤なども同じかと思いますが、歯磨き粉もたくさんつければその分たくさん汚れが落ちる、となんとなく感じてしまいがちですがそれは間違いなんです。
それどころか、歯磨き粉のつけすぎについてはむしろ逆効果になります。
歯を傷つけてしまう
多くの歯磨き粉には「研磨剤」が入っています。
これは歯の汚れを落とすために入っているのですが、これが歯を傷つける原因になります。
もちろん研磨剤のメリットもあって、歯の着色汚れなどを落としてくれるので、(コーヒーなど)日頃の生活でつく着色汚れをきれいにしてくれますが、着色が目立たない方にとってはむしろデメリットが大きく、歯科医の中には研磨剤の入った歯磨き粉を使うぐらいなら「水」だけで磨いたほうがマシだという先生もいるぐらいです。
泡がたつため歯がよく磨けない
口の中が泡でいっぱいになるため、なんとなく磨けた気がしてしまうのです。
じつはプラークを落とすだけであれば、歯磨き粉なしで水だけでもじゅうぶんだったりもします。
ちなみに、この泡の立ちすぎを防ぐもう一つの方法があって、それは歯ブラシは水で濡らさないということです。
歯磨き粉をつけすぎない。さらに歯ブラシを濡らさない。このふたつを意識してください。
最近の歯磨き粉に入っているフッ素などは、歯質の強化などに役立つことも事実です。
ですので、絶対に歯磨き粉はいらないということではなく、だいたい歯ブラシの毛先の1/3程度の量をつければじゅうぶんだということをぜひ覚えておいてください。
デンタルフロスも欠かさずに
さいごはデンタルフロスです。
歯磨きの目的はプラークを落とすことでしたよね。そしてそのプラークは主に「歯と歯の間」「歯と歯ぐきの間」についている。
あれ? 歯と歯の間…??
そうです。歯と歯の間のプラークは歯ブラシではなかなか落とせないのが現実です。
事実、プラークの除去率は歯ブラシだけで磨いた場合が60%なのに対し、歯ブラシとデンタルフロスを併用した場合は80%以上にまで上がるというデータもあります。
使い慣れていない方にとっては、このデンタルフロスはちょっとめんどくさいと感じるかもしれませんが、その効果はプラークの除去にとどまらず、(出血などによる)歯周病の早期チェック、口臭予防、虫歯の早期発見などさまざまな面でメリットがあります。
歯科医や歯科衛生士はみんなやってるんじゃないかな?とおもうぐらい、
デンタルフロスは本当にいいことづくめです。
まだ使っていない方はぜひ、毎日の習慣にしていただくことをおすすめします。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
日ごろから「歯磨きは大切だ」という言葉は聞いていても、なぜたいせつなのか、そもそも歯磨きをする目的は? などあまり意識しない方がほとんどなのではないでしょうか。
どんな行動であっても、それをする目的と納得できる理由があれば、実際に行動に移しやすくなるのだと思います。
この記事をとおして、正しい歯の磨き方を実践できる方がひとりでも多くふえればとてもうれしく思います。
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