こんにちは。歯科衛生士のナカタ コマチです。
みなさんジュースは好きですか?
汗をかいたらスポーツドリンク、ほっと一息つきたい時にレモンティー、ときどき無性に飲みたくなる炭酸飲料に、ちょっと健康を意識した100%オレンジジュース…
わたしもそうです。
こんなふうに飲み物で気分転換したり、一息ついたりする時間が大好きです。
…いえ、正確には、大好きでした。
歯科衛生士の専門学校で酸蝕歯(さんしょくし)という言葉を知って、あの実験結果を目の当たりにするまでは。。。
ということで、今回は虫歯や歯周病とならぶ歯のトラブルとして近年ふえている「酸蝕歯」とよばれる歯の病気について、くわしく説明していきたいと思います。
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目次
酸蝕歯(さんしょくし)とは
酸蝕歯を理解するためには、いわゆる「虫歯」(専門用語では「う蝕」といいます。)とのちがいを知ることが一番の近道だと思います。
そこでまず、虫歯についてすっごく簡単に説明しておきますね。
歯の表面についた原因菌が、甘いものを食べて酸を出し、その酸によって溶けてしまった歯のこと。
をいいます。
これに対し酸蝕歯というのは(こちらもすっごく簡単に説明しちゃいますと…)
食べもの、飲みものに含まれる酸そのものによって溶けてしまった歯のこと。
をいうんです。
このふたつの決定的な違いは、虫歯は菌が原因であるのに対して、酸蝕歯は菌は原因ではない、という点にあります。
では酸蝕歯は何が原因なのか。
くりかえしになりますが、酸性の食べものや飲みものそのもの、です。
つまり、酸性の食品や飲料を口に入れることだけで歯は溶けてしまうということです。
酸蝕歯の症状
初期
- 知覚過敏(冷たいものや熱いものがしみる)
- 歯が黄ばんでくる
- 歯の表面にカドがなくなり丸みを帯びてくる
などがあります。
中期
初期状態を放置していると以下のような中期の状態へ移行していきます。
- 重度の知覚過敏
- 歯が透ける
- 歯が茶色くなる
- 歯に細かなデコボコができる
重度の知覚過敏をはじめとして、つらい症状に悩まされてしまいます。
また歯のエナメル質が溶けている状態ですので、当然虫歯にもなりやすくなります。
酸蝕歯になる原因
いよいよ原因です。
さきほど「酸蝕歯とは、食べものや飲みものに含まれる酸によって溶けた状態の歯」と説明しました。
ということは、原因となるのは「酸」を多く含む食品ということになります。
具体的にどんなものがあるか、まずは列挙してみます。
- 炭酸飲料
- スポーツドリンク
- 果汁飲料(レモン、オレンジなどの柑橘系はとくに)
- 梅干しや酢漬けの食品
- 酢
- ワイン
などが代表的です。
ただ、単純に列挙するだけだとあまり印象に残らないかと思いますので、もうすこし詳しくみていくことにしましょう。
pH(ペーハー)で比較する
「酸性」と聞くとあわせて「アルカリ性」「リトマス試験紙」などの言葉が頭に浮かびませんか? そしてそれを表す単位としてpH(ペーハー)という言葉も浮かんでくるかもしれません。
pHは7を中性として、それより小さいほど酸性、大きいほどアルカリ性を示します。
そして歯の溶け出しが起こる「臨界pH」は約5.5だといわれています。
つまり、歯はpHが5.5より低い環境にあると溶けていってしまうということです。
いくつか具体的な飲みもののpHをあげてみますね。
「pH5.5」までは歯の臨界pHに達してませんので、歯は溶けません。つまり、上のふたつ(お茶や水)では歯は溶けないということです。
もう少しみていきましょう。
オレンジジュースです。これはpHが4ですので、歯が溶け出してしまいます。(100%のオレンジジュースでも同じです。)
さらに…
いかがですか。
コーラに至ってはpHが2です。
こういった酸の強いものを頻繁に摂取していると、酸蝕歯になる確率がかなり高くなってしまいます。さらにジュースには砂糖も大量に入っていることを考えると、、虫歯になる可能性という面からも、頻繁に飲むには覚悟がいるなあ…という気がしてしまいますよね。
ちなみに、冒頭でお話しした歯科衛生士の専門学校でおこなった実験とは、この酸蝕歯の威力をたしかめるという趣旨のものだったのです。
どんな実験かというと、歯周病などで抜いた本物の歯をスポーツドリンクに浸して2〜3日置いておくというものです。
その結果はと言うと、
固いはずの歯が見るからにもろく見え、じっさいに爪などで軽くひっかいただけでもポロポロと傷がついてしまうのです。。
この実験は本当にインパクトがありました。
その日以来、わたしはよっぽどのことがない限り酸性の強い飲みものは飲まなくなってしまいました。(ただし、絶対に飲んではいけない、ということではなくもし飲む時はダラダラ飲まずに一度に飲み、可能であればそのあと水やお茶で口をゆすぐなど意識すれば大きな問題にはなりません。)
酸蝕歯の予防法
酸蝕歯になる原因は先ほど紹介したとおり、日ごろの生活のあらゆるシーンにひそんでいます。
ですが逆に考えると、日常生活で少しだけ意識することで十分予防することができるともいえます。ポイントをあげていきます。
酸性の食べものや飲みものを減らす
あわせて大切なのが、酸性のものをダラダラ・チビチビと口にしないということです。まずはこれが基本になります。
酸の強いものを食べたり飲んだりしたあと、すぐには歯を磨かない
酸性の食べものや飲みものをとってすぐは、歯が溶けてしまっています。その後30分ぐらいをかけて口の中の唾液が口の中を中性に戻すと同時に、溶けてしまった歯を修復します。(唾液ってすごいんです。)これを再石灰化と言います。
再石灰化がおきるまでは歯が柔らかい状態ですので、歯磨きでさらにすり減ってしまいます。30分程度はあけてから歯磨きするようにしてください。
歯の修復を助けるガムをかむ
「ポスカム」「リカルデント」などのガムはミネラルが含まれており、柔らかくなっている歯にミネラルを補給してくれます。
また唾液も増えますので、口の中のpHを適正な環境に戻してくれることからもおすすめです。
固い歯ブラシを使わない
いくら一定の時間をあけていても、酸性のものを食べたあとの歯は痛みやすいことにかわりありません。
そこで固い歯ブラシでゴーシゴーシやってしまうと歯の表面が削られて酸蝕歯を進行させてしまいます。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
歯の疾患というと虫歯や歯周病が代表的ですが、近年はこの「酸蝕歯」になる患者さんもふえており注目されています。
たとえ砂糖は入っていなくても、酸性の食品を継続的に口にしていると歯が溶けてしまう。
神経質になりすぎる必要はありませんが、日々口に入れる食べものや飲みもののpHをすこし意識して、酸蝕歯を防いでいただければと思います。
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