こんにちは。歯科衛生士のナカタ コマチです。
「……なに、やってるの?」
おそるおそる聞いてきた夫の表情をいまでも覚えています。
よっぽどおかしな行動に見えたのでしょう。
わたしが何をしていたかというと、まだ赤ちゃんだった頃の子どもが口から流す「よだれ」を手に取り、じーーっと見ていたんですね。
一言でいえば、見とれていた、んです。(アブナイ人ではありませんよ ^^;)
歯科衛生士の専門学校時代などに、よだれ(唾液)の働きについて勉強しました。
いかに唾液がたいせつか、歯だけでなく生活全般で役立っているかについて学んだのですが、その中で「理想的な唾液は赤ちゃんが出すよだれ」だと知りました。
そのことを思い出し、ついつい子どもの唾液(よだれ)に見惚れてしまったというわけです。
今回はそんな唾液のはたらきについて、お話ししようと思います。
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目次
唾液は一日にどれくらい出ているの?
まず基本的な情報として、唾液が一日にどれくらい出ているかについてお話しします。
年齢とともに少しずつ減っていくのですが、だいたい1リットル〜1.5リットルくらいです。
けっこうな量ですよね。
で、その唾液、口の中からでるわけですが中でも「舌の下のあたり」から、ぜんぶの唾液の75%が出ているんです。
じつは人の歯のうち、「下の前歯」って虫歯になりにくいのですが
これは唾液の多くが舌の下からでていることと、大きな関係があるのです。
唾液のはたらき
では具体的な唾液の働きをみていきましょう。
口の動きを滑らかにする
見落としがちなのですが、わたしたちが話したり食べたりするにあたり、唾液の役割ってとても大きいのです。
ちょっとイメージしてみてください。
- 口がカラッカラの状態で、ペラペラとなめらかに話しができそうですか?
- 口がパッサパサの状態で、食べものをおいしく食べられそうですか?
難しいですよね。
これは唾液が口の動きをなめらかにする役割を担ってくれているためなんです。
消化する
唾液に含まれる「アミラーゼ」という酵素が、口に入ってきた炭水化物を消化してくれます。
消化というと胃や腸の中で行われるものと思いがちですが、唾液によって口の中でも行われているんです。
刺激から口の中を守る
口の中にある粘膜って、本来とても傷つきやすい組織なんです。
その傷つきやすい粘膜を唾液が守ってくれていることで、わたしたちは熱いものや冷たいもの、辛いもの、酸っぱいものに固いもの…これらを安心して口にすることができているんです。
洗浄作用
口の中にいる細菌はもちろん、口の外から入ってくる細菌(風邪などのウイルスなど)を体の中に入れないよう、唾液の中に含まれる抗菌物質が活躍してくれています。
歯の再石灰化
虫歯は、虫歯菌が出した酸によって歯が溶けることをいいます。
唾液に含まれる「リン酸イオン」「カルシウムイオン」は、歯について再石灰化が促されることで歯質が強化されます。
さきほどお話した、下の前歯は虫歯になりにくいことの理由のひとつも、この歯の再石灰化促進作用にあるんです。
歯の脱灰を防ぐ
脱灰(だっかい)とは、酸によって、歯の一番外側にあるエナメル質からカルシウムやリン酸が溶け出てしまうことを言います。
そして、このエナメル質からカルシウムやリン酸が溶け出てしまっている状態の歯を「初期虫歯」というのですが
唾液はこの初期むし歯の原因となる「酸」を中和し、口の中が酸性に傾くことを防いでくれます。
さきほどの「歯の再石灰化」とともに、唾液によって虫歯になりにくくなる理由のひとつです。
有害物質を希釈する
唾液が、食品添加物や有害な活性酸素などの無害化に有効である可能性を示す報告もあります。
よくかんで食べものと唾液をよく混ぜることで、口に入れるものの安全性を高めることができると考えられます。
唾液が減るとどうなる?
唾液のはたらきが弱まるということですので、簡単に列挙するだけでもこのようなことが起こりやすくなります。
- 虫歯、歯周病になる
- ガンジダ菌という菌により、口の中にカビが生える
- つよい口臭
- 口の中が傷つきやすくなり、口内炎がふえる
- 入れ歯がすぐとれる、痛い
唾液が減る原因
- 年齢(年をとるとしだいに唾液の量は減っていきます)
- 薬(特に「抗うつ剤」や自律神経系の薬の作用として)
- ストレス
- 緊張状態
- ガンの治療(に伴うX線や抗がん剤の作用として)
唾液を増やすためには
よく噛む
食事をしているときは、食べていないときと比べて唾液が約5〜7倍もでています。
よく言われることですが、一口で30回かむようにすると、ダイエット的な効果も見込めるだけでなく、唾液の分泌が増えることによる恩恵にもあずかれるということですね。
よくかむために、おいしものを口にすることも大事かもしれません (^^♪
唾液減少の原因となる薬をかえる
唾液の分泌が減ってきてしまっていても気にせず、そのまま薬を服用し続けてしまっている方は案外多くいらっしゃいます。
もちろん薬の選択肢がそれ以外ない場合は仕方ありませんが、変更が可能な場合もありますので一度医師に相談してみるといいと思います。
水分補給
仕事中など、ついつい水分をとることを忘れてしまいがちだと思うのですが、意識して水分を補給してください。
唾液をふやしたり口の中を乾燥させない効果だけでなく、体全体にとっても水分補給は大切です。
唾液腺マッサージ
以下の図を参考にマッサージしてみてください。
リラックスしてやることが心身ともに有効です〜
人工唾液
これまでに紹介した方法を試してもなかなか効果がでないときは、人工唾液というものを使ってみるのもひとつの手です。
歯科医院で相談してみてください。
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まとめ
人生には、いいときも悪いときもあるのが普通ですよね。
とてもストレスフルな状況にあるとき、病気になってしまったときだけでなく、年を重ねることそのものも唾液が減ることの原因にもなります。
まずはごはんをおいしく食べることが、唾液のためだけでなく日々を豊かに生きるうえでもたいせつだと感じます。
誰かと一緒にたべるもよし。
ひとりで食べることだってよし。
「あぁ、おいしい!」そう感じながらご飯をいただけるといいですね。
そして赤ちゃんのように、たくさんのよだれを出したいものです ^^;
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